2021年に見た、機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
- 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイを見て
- 閃光のハサウェイで気になったこと
- 気になる前の人間ドラマ
- 2021年に見たということ
- 2021年に向けてアップデートしていると感じた点
- 細かいことが気になるほど、劇場で見るハサウェイは面白い
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイを見て
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイを見てきました。
監督である、村瀬修功氏を初めて認識したのは、アルジェントソーマでした。あの人が監督を務められるのか!と思いました。
原作があり、多くの鑑賞者が結末を知っている「閃光のハサウェイ」の映画化。リアルなロボットアニメ映画への挑戦。おそらくはガンダムとして初めて、企画段階からグローバルな市場や配信ビジネスを意識して、超一流のクリエーター、演技者が文字通り総力を注いで制作した、渾身の一作。
とても面白くて、興奮しました。
閃光のハサウェイで気になったこと
ですが、見終わった後、どこか引っかかるものがあったのです。
なかなか言語化できなかったのですが、それは、2021年に見たことなのかな、と考えられるようになりました。
閃光のハサウェイを見て、1つだけ、引っかかったもの。それは、テロリストとしての行動についてです。
気になる前の人間ドラマ
ネタバレをさけるので詳細は書きませんが、予備知識がなくても、初見の人でも、ハサウェイがマフティであるということは、すぐに気がつく物語になっています。そこから、サスペンス要素が出てきます。ハサウェイが地球に降りた理由は具体的にはわからないものの、マフティとして活動をすることは想像できます。
既に地球連邦政府の政治家を「粛正」しているマフティは、現代に置き換えると反逆罪を犯していることになり、身柄の拘束または結果的な殺害は地球連邦軍にとって優先順位の高いマターとなっているでしょう。
実際にケネスはそれを明言しています。さらにケネスは、優秀な軍人であり、指揮官であり、ある意味魅力的な人間としても描かれている。絶対に、一筋縄ではいかない相手です。
いつかは正体がバレるにしても、どんなタイミングで、どの様になのか。ギギ・アンダルシアというキャラクターが絡んできて、予想を難しくするばかりか、状況がかき回され、ドキドキハラハラさせられるのです。
果たして、実際にマフティとして動き出したハサウェイは、物語後半のクライマックスで、宇宙世紀0093年という、鑑賞者が初めて目撃することになる時代の、モビルスーツ同士の空中戦を繰り広げるのです。
2021年に見たということ
閑話休題。サスペンスのパートでは、テロリストとして行動するハサウェイが描かれています。一見、平和で楽園のような地球のリゾート地で垣間見える、地球連邦(軍)の腐敗。市井の人との会話、揺れる感情と思想。理想と現実。
そんな中で行動するハサウェイの描写が、ここだけ、浮いているのです。
鑑賞者なので、神さまの視点なのですが、それにしても、マフティとは行かなくても、テロリストってバレない?本人たちは偽装しているのですが、あからさまじゃない?と心配になる感じ。果たして、彼らの行動は…となりました。
ハサウェイが(確か)「まだハサウェイであることを使いたい」と言っていた(はずな)ので、もうバレてもいいという前提は違う。実際に隠密行動をしていたわけですしね。バレた経緯も、当たり前のことをやった結果で、指揮した人間が優秀というより、前任者が相当無能としか思えない。実際ケネスのセリフから、前任者の能力がうかがえます。
その前の物語の中で、独自にモビルスーツを運用できる組織力と資金力。既に粛正の実績がある実行力。そういったものを見ているので、テロ組織としては、それなり以上であることが想像できます。なのに、構成員はこんな行動…?と思ってしまったわけです。
こんな違和感を持ったのは、2021年に見たからなのかな?と思いました。
今の我々は、特に3.11以降の国際的な情勢や、現在進行形で行われている某国のニュースを見ています。国家が、一個人に銃を向けたとき、どういうプロセスを経て、結果どうなるのか。小説や映画などのフィクション*1以上に、生々しく知っています。
身近な住んでいる地域で起こった犯罪だって、監視カメラなどから、いずれは犯人逮捕となる世の中です。
徹底的なリアルの中に、そこだけフィクションを感じたからなのかな、と考えました。
2021年に向けてアップデートしていると感じた点
逆の印象もあります。
1つは、ケネス・スレッグです。金髪碧眼から、デザインが変わりました。ギギ・アンダルシアとバランスが取れています。2021年ということを考えると、白人2人と東洋人1人*2で物語が進むより、印象が違うでしょう。
実際、ケネスは諏訪部(呼び捨てすみません)ボイス&演技と相まって、はっきり言って、すげーイイやつ。諏訪部順一ボイスのキャラクターは、女性キャラクターの根谷美智子さんでいう「いざというときでなくても、常に頼りがいがある」傾向がありますが、まさにそれ。第1部で、今のところかもしれませんが、とても魅力的な人物です。ネットで同じ意見を見ましたが、ハサウェイ&ガウマンと、ケネス&レーンがチームになったら、最強です。マフティと連邦軍、仲良く人類のためになるのでは?と思ってしまいます。
もう1つは、ハサウェイとギギの会話です。ハサウェイが、母であるミライさんの実家の事を話して、自分のルーツが日本にあることを告白するシーンで、ギギが(確か)「だから、そんな風ぅ?」といいます。その後で地球環境に関することがぽろっと言われていた(と思います)ので、そのためだとしても、ギギの危うさを強く感じました。これだけ作り込まれた作品で、このセリフに意味がないとは考えられません。マーケティング的にも、会話の流れから自然であっても、白人が、揶揄する意図ではないにしても笑いながら東洋人の外見や行動に言及することには、慎重になるはず。制作者の意図を感じました。
細かいことが気になるほど、劇場で見るハサウェイは面白い
こんな細かいことが気になってしまったのも、あまりにも閃光のハサウェイの完成度が高かったからでしょう。
ネットで公開された、冒頭のシーンで最後、ケネスに銃を渡すハサウェイの一連の動作。事情聴取をする役人2人の声優による、見事な演技。事前にネットで知っ(てしまっ)た、ハサウェイの食事シーンの細かさ。地球連邦政府の腐敗とマフティの理想、職業軍人組織とテロ組織の見事な対比。天国のような地球とその環境を楽しみあるいは暮らしている人間と、地獄のようなテロ行為とモビルスーツ戦に巻き込まれる市民。Ξガンダム登場のシーンとオマージュ。そして、公式サイトでも紹介されている、アムロ・レイの登場。どれもウッとなること間違いなし。
登場人物を通して垣間見えるマフティと連邦軍は、ベクトルは違えど、理想を追い求め実現しようとしている組織として描かれ、善も悪もない。キャラクターの行動原理は共感でき、「なぜ、戦うのか」「だからこそ、戦う」がめまぐるしく交差する。
前半で落下しながらの戦闘を見せておいてからの、ファーストガンダムでブライト・ノアが驚いた、モビルスーツでの空中戦、本当の空中戦が繰り広げられる。技量と意地と理想とプライド、そしてセリフがぶつかり合う戦闘は、まさしくガンダム!!
マーケティングな意味はおいて、なるほどプロモーションで関係者の皆さんがおっしゃるように、劇場で見るべき作品だと感じました。
以上、初見での感想です。
ブルーレイ見てみよう。きっと、新たな発見があると思います。そして、もちろんまた映画館でも見たい。機会があればドルビーで見たいです。